特定技能
建設分野での特定技能ビザには通常の条件の他に追加でクリアしなくてはならない条件があります
「特定技能制度」は、一定の専門性・技術性を有し即戦力となると考えられる外国人の方を受け入れることによって人手不足が深刻となっている特定の産業分野の人手不足に対応するためのもので、「技術・人文知識・国際業務」ビザなどでは行えない単純労働を含めむ幅広い業務を行うことが可能です。 特定技能ビザには「特定技能1号」と「特定技能2号」とがありますが、「特定技能2号」は「特定技能1号」をお持ちの方でさらに監督・指導者として一定の実務経験を積んでいる方が対象になるため、このページでは「特定技能1号」を中心に記載しています。 「特定技能1号」は、特定産業分野に関して、”相当程度の知識や経験が必要な技能を持つ”外国人の方向けの在留資格です。
この”相当程度の知識や経験がある”かどうかは特定技能に関する技能試験に合格しているか、又は技能実習2号を良好に修了していて、技能実習の職種・作業内容と特定技能1号の業務に関連性が認められる場合に”相当程度の知識や経験がある”と判断されます。建設分野においては、ほとんどの方が技能実習2号から取得するルートになるのではないかと思います。 「技能実習」制度は2019年に特定技能制度が作られる前の1993年にスタートしました。この技能実習生制度は、外国人の方が日本の技術や知識を学び帰国して母国でそれを生かす、国際協力ための制度として設立されました。 しかし、その実態は低賃金、残業代の未払い、長時間労働などの労働環境の問題、労働災害の多発、犯罪への関与、ハラスメント、失踪など残念ながら多くの問題を抱える結果となってしまいました。 特に建設分野では他分野に比して突出した割合の失踪者・問題が発生し、その原因の一つとして一部の監理団体において十分な監理が行われていなかったことがあると考えられました。国土交通省の資料によると令和3年の技能実習における建設分野の失踪者の数が全体の失踪者数の54%を占め、また建設業における技能実習実施企業の約8割に労働法令違反が発覚したようです。
このような現状を踏まえ、特定技能制度では建設分野の特定技能外国人の受入れにあたって各業種に共通の基準に加え、建設産業の特性を踏まえた建設分野特有の基準を設定することになりました。これがいわゆる”上乗せ規制”と呼ばれるものになります。 このような上乗せ規制の概要は次のようになります。
【建設分野における上乗せ規制の概要】 (1)業種横断の基準に加え、建設分野の特性を踏まえて国土交通大臣が定める特定技能所属機関(受入企業)の基準 を設定 (2)当該基準において、建設分野の受入企業は受入計画を作成し、国土交通大臣による審査・認定を受ける ことを求める (3)受入計画の認定基準 ①受入企業は建設業法第3条の許可 を受けていること ②受入企業及び1号特定技能外国人の建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録 ③特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入 及び当該法人が策定する行動規範の遵守 ④特定技能外国人の報酬額が同等の技能を有する日本人と同等額以上、安定的な賃金支払い、 技能習熟に応じた昇給 ⑤賃金等の契約上の重要事項の書面での事前説明 (外国人が十分に理解できる言語※母国語) ⑥1号特定技能外国人に対し、受入れ後、国土交通大臣が指定する講習または研修を受講 させること ⑦国又は適正就労監理機関(FITS) による受入計画の適正な履行に係る巡回指導の受入れ等
建設業は季節によって工事の受注量の変動が激しい業種です。技能労働者の賃金は6割が日給制で、仕事がないと手取り賃金が下がるという経済的に不安定になる傾向があります。さらに、受注した工事ごとに就労する現場が変わり、通常は現場管理を元請がおこなうため、実際に労働者を雇用する下請の専門工事業者では労務管理や就労管理が難しい業種であるといえます。 これらの建設業特有の事情を踏まえ、特定技能外国人の受入企業となる会社には建設業許可を取得していることが求められます。 さらに、効率的な現場管理のために建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録が義務化 され、安定的な賃金支払いとして賃金の月給制も義務化 されます。技能習熟に応じた昇給も必要になり、雇用契約書などに明記する必要があります。 また、建設業は他の業種に比べて労働災害が発生しやすくなっています。特定技能外国人の方が求められる日本語能力は日本語能力試験N4レベル以上で、このN4レベルは日常的な場面で”ややゆっくりと話される会話であれば内容がほぼ理解できるくらい”の日本語力になります。そのため、専門的な用語を多く用いる建設業の現場では日本語でのコミュニケーションが円滑に行うことができない場合も考えられます。このような場合には労働災害の被害に遭う確率が高くなるため、常勤の日本人スタッフによるフォローが求められることになります。こうした事情から、建設業においては特定技能外国人の方をフォローする日本人の常勤従業員の人数以上の特定技能外国人の方を受入れることはできないという”受け入れ制限”があります。
そして、前述のように技能実習生失踪者の約半分を建設分野が占めていたことなどを踏まえ、建設分野における特定技能外国人の受入れにあたっては、他分野にはない建設分野独自の適正な就労環境確保のための仕組みを構築することが求められました。 そこで、民間の取組みだけに任せきりにするのではなく、建設業の所管省庁である国土交通省による受け入れ計画の審査・認定が必要 としました。さらに、建設業の業界団体が独自に立ち上げた建設技能人材機構(JAC)への加入が義務化され 、そしてこの建設技能人材機構(JAC)から委託された適正就労監理機関である国際建設技能振興機構(FITS)の視察受け入れが義務付けられました。 このようにしてさまざまな公私の機関が外国人の方の受入れに適切に関与することで、受入企業と特定技能外国人材の双方が安心して雇用・就労できる環境を整備したわけです。
建設技能人材機構(JAC)とは?
技能実習制度では、前述のように労働環境が非常に問題視されていました。そのため、2019年に特定技能制度を新設するにあたり、これまで問題となっていた建設技能者全体の処遇改善や人材確保の国際競争力の向上などの問題・課題に対応するために「建設技能人材機構(JAC)」が設立されました。「建設技能人材機構(JAC)」は民間の取組みのみに任せきりにすることなく、業所管省庁である国土交通省の指導のもと、元請けゼネコンや、受入対象職種の専門工事業団体などの建設業の業界団体が発起人となって設立された一般社団法人です。JACはJapan Association for Construction Human Resourcesの略称になります。JACの主な役割には以下のようなものがあります。
・受入企業が認定受入計画に従って適正な受入れを行っているかの監理 ・建設業務については一般の民間有料職業紹介事業者による職業紹介は行ってはいけないため、無料職業・人材紹介 ・日本語や技能・安全衛生教育等の教育訓練や技能試験の実施 ・制度の周知活動や優れた技能を持つ外国人材と受入企業を表彰
また、以前は建設分野での特定技能の業務区分は19区分と細分化され、その業務範囲も限定的であったため、建設業に係る作業の中で特定技能には含まれないものがありました。しかし、該当する専門工事業団体等から自分たちの工事業種も特定技能の対象に含めてほしいという要望が強く、現在では業務区分を「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3区分に統合されています。この統合の際、建設関係の技能実習職種を含む建設業に係る全ての作業を新区分に分類したことで建設業に係るすべての職種について特定技能での受け入れが可能になりました。
なお、この業務区分は作業の性質をもとにしたものであり、作業現場の種類によるものではありません。そのため、従事する作業については現場を問わず従事することが可能です。また、同じ区分内の業務であれば経験のない工事も行うことができます。
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