高度専門職
高度専門職ビザの優遇措置
高度専門職ビザでは、外国人で高い技術や深い知識をもっている、いわゆる高度人材の方の受け入れを促進するため出入国管理上の優遇措置が与えられます。「高度専門職1号」の場合、主な優遇措置には以下のようなものがあります。
【高度専門職1号の優遇措置】
・複合的な在留活動の許容
・在留期間「5年」の付与
・在留歴に係る永住許可要件の緩和
・配偶者の就労
・一定の条件の下での親の帯同の許容
・一定の条件の下での家事使用人の帯同の許容
・入国・在留手続の優先処理
以下でそれぞれについて簡単に記載していきます。
複合的な在留活動の許容
通常、日本国内に在留する外国人の方は1人につき1つの在留資格しか保有できず、それに対応する活動しかすることができません。しかし、高度外国人材として高度専門職ビザを取得している場合、例えば高度専門職1号(イ)で許可された大学での研究活動と併せて、本来なら経営・管理ビザが必要な関連する事業を経営する活動を行うなど、複数の在留資格にまたがるような活動を行うことができます。
在留期間「5年」の付与
就労系の在留資格では、取得時に1年、初回の更新で1年、2回目以降の更新で3年の在留期間が認められることが多く、5年の在留期間が認められるには数回の更新が必要になる場合が多いのが実情です。これは、入国管理局がある程度短いスパンで在留状況を確認する必要があると考えているためです。
しかし、高度専門職ビザを取得し高度外国人材として活動している場合には当該外国人に対する信頼度が初めから高いため、法律上の最長の在留期間である「5年」が一律に付与されます。在留期間が短いと、期限が来るたびに更新手続きが必要になり、時間や金銭的負担が非常に大きなものになります。そのため、初めから長い期間の在留期間が認められる高度専門職ビザのメリットは非常に大きなものになります。
在留歴に係る永住許可要件の緩和
永住許可は、母国の国籍を保有したまま日本での永住権を取得するもので、ベネフィットが大きい分審査は厳しく、帰化申請よりも難しいと言われています。その審査基準の中でもクリアすることが困難なのが”原則として引き続き10年以上日本に在留していること”という居住要件です。この10年の期間は、1度の出国期間が90日を超えてしまう、または通算で1年間の出国期間が180日を超えてしまうと期間の算定がリセットされてしまうなど、非常に厳しい制約があります。
高度外国人材として高度専門職ビザを取得している場合にはこの永住許可が認められるために必要な期間が3年に大幅に短縮されます。さらに高度外国人材の中でも特に高度と認められるポイント計算で80点以上の方であれば1年にまで短縮されます。
配偶者の就労
通常、家族滞在ビザなどで来日している外国人の配偶者の方は、資格外活動許可を得れば就労することができます。ただしこの場合、就労することができる時間は週28時間までに制限がされます。この制限がないような就労活動を希望する場合には「技術・人文知識・国際業務」のような就労ビザを取得する必要があり、そのためには学歴や職歴で一定の条件を満たすことが必要になります。
しかし、高度専門職ビザを取得し高度外国人材として活動している場合、その配偶者の方は「技術・人文知識・国際業務」のほか「教育」ビザなどに該当する活動を行おうとする場合に、学歴・職歴などの要件を満たしていない場合でも在留資格変更許可申請をしてこれらの在留資格を取得することが可能です。ただし、この優遇措置を受けるには高度専門職ビザを取得している高度外国人材の方と継続して同居をしている必要があります。
一定の条件の下での親の帯同の許容
現在の入管法では、就労を目的とする在留資格で在留する外国人の方が日本に親を呼ぼうとした場合には「家族滞在」には該当せず、告示以外の「特定活動」によるしかありませんが、この告示以外の特定活動は審査基準が非常に厳しいものになっています。
しかし、高度専門職ビザを取得し高度外国人材として活動している場合には一定の条件を満たせば外国人の親の受入れが認められます。具体的にクリアしなくてはならない条件は以下のようになります。
高度外国人材又はその配偶者の7歳未満の子(養子を含みます。)を養育する場合、または高度外国人材の妊娠中の配偶者又は妊娠中の高度外国人材本人の介助等を行う場合で
・高度外国人材の世帯年収が800万円以上であること
・高度外国人材と同居すること
・高度外国人材、又はその配偶者のどちらかの親に限ること
一定の条件の下での家事使用人の帯同の許容
外国人の家事使用人の雇用等は、在留資格「経営・管理」「法律・会計業務」等で在留する一部の外国人に対してのみ認められていますが、高度専門職ビザを取得し高度外国人材として活動している場合であれば、一定の条件を満たせば外国人の家事使用人の帯同・雇用等が認められます。具体的には入国帯同型、家庭事情型金融人材型の3つの場合が予定されており、それぞれのケースにおいてクリアしなくてはならない条件は以下のようになります。
【外国で雇用していた家事使用人を引き続き雇用する場合の条件(入国帯同型)】
・高度外国人材の世帯年収が1,000万円以上あること
・帯同できる家事使用人は1名まで
・家事使用人に対して月額20万円以上の報酬を支払うことを予定していること
・帯同する家事使用人が、日本に入国前に1年以上当該高度外国人に雇用されていた者であること
・高度外国人材が日本から出国する場合、共に出国することが予定されていること
【1年以上当該高度外国人に雇用されていた者以外の家事使用人を雇用する場合の条件(家庭事情型)】
・高度外国人材の世帯年収が1,000万円以上あること
・帯同できる家事使用人は1名まで
・家事使用人に対して月額20万円以上の報酬を支払うことを予定していること
・家庭の事情(申請の時点において、13歳未満の子又は病気等により日常の家事に従事することができない配偶者を有すること)が存在すること
【投資運用業等に従事する金融人材が家事使用人を雇用する場合の条件(金融人材型)】※2021年7月より
・金融人材の世帯年収が1,000万円以上あること
・帯同できる家事使用人は2名まで(ただし、2名の場合は、世帯年収が3,000万円以上の場合に限る。)
・家事使用人に対して月額20万円以上の報酬を支払うことを予定していること
家事使用人が取得する在留資格は告示に定めがある特定活動になります。注意点として、入国帯同型の場合、在留期間中に雇用主を変更することは認められません。この点、家庭事情型であれば日本入国後であっても雇用主を変更することが認められます。
入国・在留手続の優先処理
一般的に在留資格の審査には2週間から数か月の期間が必要なのが通常です。しかし、高度外国人材の方に対する入国・在留審査は
・入国事前審査に係る申請については申請受理から10日以内を目途に
・在留審査に係る申請については申請受理から5日以内を目途に
優先的に早期処理が行われます。ただし、必要書類が不足している場合や、申請内容に疑義があり提出資料等の詳細を確認する必要がある場合などについてはこの期間を超えることもあります。
「高度専門職2号」の場合
高度専門職2号の優遇内容は、「高度専門職1号」で認められる活動のほか、その活動と併せて就労に関する在留資格で認められるほぼ全ての活動を行うことができます。
a)「高度専門職1号」で認められる活動のほか、その活動と併せて就労に関する在留資格で認められるほぼ全ての活動を行うことができます。
b)在留期間が「無期限」になります。
c)「高度専門職1号」と同様に上記「在留歴に係る永住許可要件の緩和」や「配偶者の就労」、「一定の条件の下での親・家事使用人の帯同の許容」といった優遇措置が受けられます。
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