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紛争や人権侵害から住み慣れた故郷を追われ、逃れざるを得ない外国人の方は、「難民認定申請」を行い、法務大臣から「難民」であるとの認定を受けることができます。
難民として認定されると難民条約に規定する難民としての保護を受けることが可能です。
令和5年には8,184件の難民認定申請が処理され、289人の方が難民と認定されました。このように難民申請をした方が実際に難民と認定され、保護を受けることができるケースは極めて稀です。日本に滞在し続けるためには何らかの在留資格、通称ビザを取得する必要があります。そこで本ペ-ジでは難民申請中の方が就労ビザを取得できるのかについて記載していきます。
難民申請は申請する方の住所を管轄する地方出入国在留管理官署で提出します。その際、提出する書類は次のようになります。
【難民申請の提出書類】
手数料はかかりません。入国管理局Webサイトでの標準処理期間6ヵ月と記載されていますが、実際には一次審査のほかに審査請求も含めると平均して3年ほどと言われています。
入国管理局に難民認定の申請を行うと、難民調査官によって実態調査が行われます。この際、難民であることの主張・立証確認のため、難民調査官による面接があります。集まった情報から難民の該当性の判断がされ、該当性があるとされると難民認定がされます。難民認定がされると認定書が交付され、この写しを提出することで在留資格「定住者」への変更ができます。
該当性がないと判断された場合には「補完的保護対象者」に該当するかどうかが審査されます。補完的保護対象者とは、難民条約上の「難民」ではないものの、難民と同様に保護すべき紛争避難民などを指す制度です。2023年12月1日に入管法の改正に伴い、この補完的保護対象者の認定制度が開始されました。補完的保護対象者の該当性があると判断されると、難民申請は不認定になりますが補完的保護対象者として認定されます。この場合にも難民認定がされた場合と同様に在留資格「定住者」への変更ができます。
また、難民認定された方は、日本社会で自立した生活を送れるよう、日常生活に必要な日本語力の習得のサポ-トや日本の社会制度や生活習慣、文化、保健衛生などを学ぶ生活ガイダンス、就職先や職場適応訓練先のあっせんなどの支援プログラムを受けることができますが、補完的保護対象者として認定された方もほぼ同様の支援を受けることができます。令和5年は678人の方が補完的保護対象者と認定されました。
これらの難民認定や補完的保護対象者の認定に不服がある場合には審査請求をすることができます。
前述のように、難民申請は審査が終わるまでに数年かかるのが通常です。そのため、難民認定申請の審査中は、申請結果が出るまでの待機期間に、在留資格「特定活動」を取得して日本に滞在することができます。
「特定活動」のビザは他の在留資格に当てはまらないビザをまとめた在留資格で、同じ特定活動ビザでも多くの種類があります。簡単に言えば”その他”の在留資格です。このうち、難民申請中の方が取得する特定活動ビザは”難民ビザ”と呼ぶこともあります。
難民ビザも特定活動のカテゴリ-のため、このビザでは就労により収入を得ることはできません。しかし、資格外活動許可の申請は可能です。資格外活動許可とは、在留資格の範囲外で収入を得る活動を行う場合に必要となる許可です。特定活動のような就労系の在留資格以外で滞在する外国人の方でも生活費を補うためにアルバイトなどで仕事をすることができます。
かつて、この制度を利用し、日本での就労を目的とした難民申請して資格外活動許可を得て就労するケ-スが多発しました。同時に単に日本に在留がしたいがために審査請求を行ったり、難民申請を何度も繰り返していたりしていました。
難民申請はその性質上、申請するための条件に学歴・経歴を前提にしないため、これを放置すると他の在留資格で厳格な条件を設定した意味がなくなってしまいます。そのため、2018年頃から入国管理局は、就労目的と思われる難民申請に対して厳格な審査を行うようになりました。これにあわせて、難民認定申請は原則2回までとし、3回目以降は「相当の理由」を示す資料を提出しなければ強制送還が可能とう対応になりました。
この流れを受けて、難民申請中に他の在留資格への変更を考える方が増えました。難民申請中であっても、いつでも他の在留資格への変更申請自体は可能です。変更を希望する在留資格は就労系ビザのほかに「日本人の配偶者等」のような結婚ビザもあります。
しかし、このような変更が認められることはあまり多くはありません。難民申請中の方がこのような変更申請をする場合、難民申請の際の理由や背景、どのように申請し、現在はどのような状況なのかも審査対象になります。最低限、変更申請の際に提出した内容と難民申請の際に提出した書類に矛盾がないことが必要です。特に就労ビザの場合には前述のような歴史的背景があるため、審査は厳しくなっています。難民申請自体を就労目的であるという疑いをもたれたところからのスタートになるため、雇用理由書で就労までの流れを詳細に説明し、合理的な採用理由で審査官を納得させる必要があるでしょう。なお、「日本人の配偶者等」別のビザであっても就労ビザほどではないにせよ審査は厳しいものになります。
結論として、難民申請中の方が就労ビザへの変更申請は可能なのかについては変更申請自体は可能だが、審査が非常に厳しいため許可を得るのは非常に難しいという事ができます。
なお、仮に変更申請が不許可になった場合、一度帰国して「在留資格認定証明書交付申請」を行い、再度日本に入国する方法も一応考えられます。この審査の際、変更申請が不許可になった際の資料や、難民申請の際に提出した資料もあわせて確認されます。2024年現在、東京入管での「在留資格認定証明書交付申請」は4ヶ月ほどかかりますが、この場合にはさらに時間がかかると思われます。そもそも難民申請するのは帰国すると問題があるからなのであって、一度帰国しなければならず、さらにこのような時間がかかる手段は本当に最終的な手段になるかと思います。
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