外国人の方が設立する会社は株式会社と合同会社のどちらが良いか

近年、外国人の方で”日本で新規にビジネスを立ち上げたい、そのために経営管理ビザの取得を検討している”といったお問い合わせが多くなってきました。

ビジネスの形態も、母国の工場で生産した製品を日本で販売するために日本に子会社を設立する場合や、逆に日本で原材料を輸入するための支店設立など、様々なご相談があります。

その際、よくあるご質問が”設立する会社は合同会社と株式会社のどちらが良いか”という点です。そこで本ぺ-ジではこの2つの会社の違いについて説明し、外国人の方にとってどちらがおすすめの会社形態であるかを解説していきます。

株式会社と合同会社の違いは?

会社の形態として一般的なものは株式会社、合同会社、個人事業主でしょうか。この中で個人事業主の場合には「経営・管理」ビザの取得はかなり厳しいのが実情です。

「経営・管理」ビザは主に日本で会社経営をする方が取得するビザです。その特性上、許可を得るための条件として学歴等が条件となっていません。このため、過去には経営管理ビザを取得して来日しておきながら全く経営活動をしないなどの問題が多く起こりました。そこで、現在では「経営・管理」ビザの取得の際に”会社の実在性”について細かくチェックされます。

この点、個人事業主の場合、開業届を税務署に提出するだけで開業できてしまいます。簡単に開業できるため、会社の信用度が低く、実在性については慎重に判断されることになります。不可能とまでは言いませんが、外国人の方が個人事業主として「経営・管理」ビザを取得できるのは相当難しいでしょう。仮に「経営・管理」ビザを取得できたとしても、個人事業主の場合は追加で外国人の社員を雇用してビザを取ることもかなり厳しいのが実情です。

したがって、外国人の方が日本で設立する場合、通常は株式会社か合同会社の形をとります。現在の日本における会社の90%ほどが株式会社です。一方、新たに設立される会社の25%ほどが合同会社です。つまり、現存の会社は株式会社の形態がほとんどですが、近年では合同会社の設立件数が増加している傾向があります。

この株式会社と合同会社の基本的な違いは下記の表をのようになります。

比較項目合同会社株式会社
根拠となる法律どちらも会社法
課税方法法人課税 いずれも申告義務あり
法人格の有無いずれも有り 個人とは別人格
社員(出資者の責任)ともに有限責任
設立時の必要人数1人以上
設立時の出資・財産の拠出各社員1円以上1円以上
設立時の定款認証不要必要
定款の収入印紙代4万円(電子定款の場合は不要)
定款の認証手数料-5万円
設立時の登録免許税6万円
または資本金額 × 0.7%
上記のどちらか高い額
15万円
または資本金額 × 0.7%
上記のどちらか高い額
経営の自由度高い低い
会社の所有者出資者(社員)株主
経営を行う人原則各社員取締役または取締役会
決算公告の義務無し有り
※大半がやっていない
利益の配当自由に設定可原則として出資比率に応じる
取締役の任期定め無し(無制限)2年~10年
監査役の任期定め無し(無制限)4年~10年

2つの会社の違いを簡単に言えば、「株式会社」と比較して「合同会社」はコストが低いと言えます。

まず、設立時のコストについては合同会社の方が低くなります。設立時に合同会社であれば定款の認証が不要です。登録免許税も安いため、株式会社が設立の際に22万~25万かかるのに対し、合同会社は10万円前後で設立することができます。

ランニング・コストについても、合同会社の方が低くなります。株式会社の場合には取締役等の任期満了の際に登記申請が必要です。登記申請を一般の会社が行うのはかなり難しいので、通常は司法書士に依頼します。株式会社の場合、この依頼料がランニング・コストとしてかかります。一方、合同会社には取締役の任期がないため、任期満了によるコストは発生しません。また、合同会社を設立した場合、経営者が受け取る役員報酬は経費に計上でき、適切な額に設定することで、所得税や住民税、社会保険料の節税ができます。

一見すると良いところしかないように思える合同会社ですが、問題もあります。それが”信用度”の問題です。前述のように、最近増加傾向にあるとはいえ、合同会社の形態はまだまだ知名度が低いのが実情です。多くの人がいまだ合同会社よりも株式会社の方が信用ができると考えるでしょう。逆に言えば、すでに外国で有名になっている会社であれば合同会社の形態をとるメリットは大きくなります。有名なところで言えば「アマゾンジャパン」や「Apple Japan」が合同会社です。

外国人の方が設立する会社は株式会社と合同会社のどちらが良いか?

次に、株式会社と合同会社の違いを踏まえ、外国人の方が設立する会社は株式会社と合同会社のどちらが良いかについて考えていきます。

前述のように、合同会社はコストの面で株式会社より優れていますが、信用度の面で株式会社に劣ります。したがって、外国人の方が日本で会社を設立する場合、すでに販路を確保している、もしくはある程度の知名度を既に母国で獲得しているという特殊な事情のない限りは株式会社の方をお勧めいたします。ただし、飲食店経営などの店舗型ビジネスの場合など、会社名よりも店舗名が外部の目に触れる機会が多いビジネスであれば合同会社でも良いでしょう。

日本で新規に販路を開拓するための営業活動をする際、現状では合同会社の場合どうしてもビジネスの場面での印象が良くありません。初対面における印象の割合は、アメリカの心理学者アルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」によると、外見が55%、話し方が38%、話の内容が7%とされています。この点、会社の名称が合同会社であるという事は会社の”外見”にあたると考えられるため、初対面の印象のうち半分以上の面でマイナス印象を抱えたまま交渉に臨むことになるリスクがあると言えます。このリスクは営業の相手方の年齢が高いほど高まるでしょう。

一方、飲食店経営などの店舗型ビジネスの場合、運営している会社が株式会社か合同会社なのかはほとんど注目されません。重視されるのは店舗の名称の方で、こちらが”外見”になります。このような場合であればランニング・コストを抑えられる合同会社は非常に魅力的なものになります。

結論として、運営面から言えば株式会社と合同会社のどちらが良いかはビジネスの形態によることになりますが、多くの場合には株式会社の形態の方が良いと言えます。

なお、理論的には「合同会社」をして「経営・管理」ビザを取得した後、「株式会社」へ商号変更による設立も可能ではありますが、手間に比べてメリットが大きいとは言えないため、お勧めはいたしません。

ビザ申請の観点からも合同会社よりも株式会社の方がビザの取得はしやすい場面は多いと考えられます。合同会社の方よりも株式会社の方が設立に手間がかかるため、株式会社の方が実際に会社を運営していくことにつき信頼がおけます。合同会社は設立にかかる手間が少ないため、株式会社の場合に比べて本気度を疑われる可能性が否定できません。以上の事からも合同会社よりも株式会社の方が外国人の方が日本で新規事業を展開する際に適していると考えることができます。


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