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技能実習制度は、開発途上国などの外国人を日本で受け入れ日本の技術や知識をそれらの国に移転させることで経済発展を担う人材を育成する、国際貢献を目的とした制度でした。
しかしながら、実際には低賃金での雇用や長時間労働の問題が多発し、言語の壁からその改善も難しいという状況になってしまいました。
海外からの批判も多くなってきたことから、2024年3月に技能実習制度を廃止して育成就労制度に切り替わることが政府で閣議決定され、2027年頃の開始が見込まれています。
そこで、本ぺ-ジでは2024年11月現在で厚生労働省より公開されている内容に基づいて記載しています。開始まで間があるため、実際に運用されるまでに変更される可能性があります。また、技能実習制度、育成就労制度ともに人材育成の側面があるため、その在留期間が満了したことを”終了”ではなく”修了”と記載しています。なお、特定技能制度は、適正化を図った上で現行制度を存続する予定です。
技能実習制度と現時点で公開されている育成就労制度の主な違いは次のようになります。
技能実習制度 | 育成就労制度 | |
---|---|---|
制度目的 | 国際貢献 | 人材育成、人材確保 |
修了後 | 帰国が前提 | 特定技能へ移行 |
在留期間 | 最長5年 | 原則3年 |
職種 | 91職種167作業(令和6年9月30日時点) | 特定産業分野に限定される予定 |
転籍 | 原則不可 | 条件を満たせば可能 |
日本語能力 | 原則は規定なし ただし「介護」は日本語能力試験N4 | 日本語能力試験N5 又はそれに相当する日本語講習の受講 |
監理団体の名称 | 監理団体 | 管理支援団体 |
以下、それぞれについて簡単に見ていきます。
技能実習制度の目的は”開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力すること”、すなわち国際貢献とされていました。これに対して育成就労制度の目的は”人手不足分野における人材確保及び人材育成”とされています。
したがって、技能実習は外国人の方が日本で学んだ技術を母国に持ち帰ることを重視しています。そのため、技能実習の在留期間の修了後には母国へ帰国することを前提に制度が設計されていました。
これに対して育成就労は、日本が外国人方から「選ばれる国」となり、日本の産業を支える人材を適切に確保することに重きをおいています。これにより、修了後には「特定技能1号」のへ移行し、外国人の方が日本に引き続き滞在することを前提として設計されています。すなわち”育成就労は特定技能の前段階の在留資格”として計画されていると考えることができます。
【育成就労制度及び特定技能制度のイメージ】
育成就労(3年) → 特定技能1号(5年) → 特定技能2号(制限なし)
ビザを変更しつつキャリアアップを図り、長く日本に滞在してもらうことで人手不足分野における人材を確保する
技能実習1号は、技能実習生が入国1年目に取得できる在留資格です。この在留資格では1年間、日本に滞在できます。ただし、原則として最初の1~2ヶ月は入国後講習を受けなければなりません。受入れ企業での雇用期間は講習を受けたあとから始まるため、実習を行える期間は実質1年より短い期間になります。
これより長い期間日本に滞在したい場合には技能実習2号への変更が必要になります。この2号も許可される在留期間は1年ですが、1度だけ更新ができるため、実質2年間の滞在が可能です。さらに長い期間日本に滞在したい場合には技能実習3号への移行が可能です(特定技能への移行は割愛)。3号も一度だけ更新ができるので、実質2年間の滞在ができます。したがって、技能実習の場合には1年+2年+2年で最長5年の間日本に滞在できることになります。
これに対して育成就労は”原則3年”と表現されています。この原則3年については、現時点では初めに在留期間1年が許可され、2回まで更新ができる最長3年という形になるか、それともいきなり3年の在留期間が許可されるかの詳細は不明です。おそらくはこのどちらかの形になると思われます。私見ですが、いきなり3年の在留期間が許可されるとしても、途中に人材育成の進捗状況を測る”評価試験”のようなものが導入されると考えられます。
技能実習制度は令和6年9月30日時点で91職種167作業と、対象職種が細分化されており、それにより行う事の出来る業務の範囲が狭い範囲に限定されています。また、技能実習全体でみると、対応する特定産業分野がなく、試験免除で特定技能に移行できない職種・作業等が全体の約15%あるのが現状です。
これに対して育成就労は、現行の技能実習制度の職種等を機械的に引き継ぐのではなく、対象となる業種を新たに設定し直して特定技能制度における「特定産業分野」の設定分野に限定される予定です。特定技能は2024年現在で12分野14業種となっており、くくりが大きいためある程度行う事の出来る業務に幅を持たせることができます。また、特定技能と範囲が一致しているため、試験免除で特定技能に移行できない分野・職種はないことになります。この育成就労制度の設定の産業分野の設定等検討は2025年から2026年初め当たりに行われる予定です。
転籍とは、現在籍を置いている企業との労働契約を終了させ、別の企業と労働契約を締結することを意味します。技能実習制度では”やむを得ない場合”を除き転籍ができません。この”やむを得ない場合”と判断されるのが次のような場合です。
【技能実習制度で転籍が”やむを得ない場合”と判断されるケース(例)】
しかし、実習実施者における労使間の諸問題や対人関係の諸問題にどのような場合が当たるかは明文化されていないため不明確でした。このため、実質的に転籍することは難しかったのが実情です。推測ですが、技能実習生が”実習生”であったため、転籍という概念となじまず、法整備が遅れたのでしょう。
これに対し、育成就労では「やむを得ない事情がある場合」の転籍の範囲を拡大・明確化するとともに手続を柔軟化する予定です。この「やむを得ない事情がある場合」場合以外は、原則として3年間、一つの受入れ機関での就労が推奨されます。しかし、次のような条件を満たしている場合には本人の意向による転籍を認める方針です。
【本人の意向による転籍(試案段階)】
なお、当分の間、過去に不法就労の温床になった反省から民間の職業紹介事業者の関与は認めないものと思われます。育成就労制度では新たに監理支援機関と、外国人育成就労機構そしてハローワークが連携して転籍支援に取り組むことになります。
上記の方針を踏まえ、2024年11月1日に技能実習制度に係る運用要領を改正し、「やむを得ない事情」がある場合の転籍の運用を改善しました。この中にはやむを得ない事情を明確化や転籍手続の明確化と柔軟化、生活支援につき在留管理制度上の措置を行うことなどが盛り込まれています。
技能実習の場合、介護等の場合などを除き、日本語能力がどの程度必要かは法律上明記されていません。しかし実際には、技能実習生は日本に来る前に技能実習生送り出し機関で6ヶ月ほど日本語を学習するのが一般的です。ただし、その際に日本人講師ではなく母国の日本語講師から学ぶため、送り出し機関で流暢な日本語を話せるようになることは少ないのが実情です。そのため、初めて来日する技能実習生の大半の日本語能力はN5レベル(基本的な日本語がある程度理解できるレベル)です。
一方育成就労では、法律で日本語能力に係る要件として、就労開始前に日本語能力試験N5等の合格又はこれに相当する認定日本語教育機関等による日本語講習の受講が求められます。
技能実習時代の反省から、受入れ機関と密接な関係を有する役職員の監理への関与の制限、外部監査人の設置の義務化等により独立性・中立性を担保し特定技能外国人の支援業務の委託先を登録支援機関に限定する方針です。これに伴い現在の監理団体は育成就労制度実施後は「監理支援機関」へと名称が変更になります。
「監理支援機関」は監理団体と同様に、主務大臣の許可を受けた上で、国際的なマッチング、受入れ機関(育成就労実施者)に対する監理・指導、育成就労外国人の支援・保護等を行います。技能実習制度の監理団体は、育成就労制度でもそのまま監理支援機関になることができません。現在の監理団体が監理支援機関として育成就労制度に関わる業務を行うためには、新たに監理支援機関の許可を受ける必要があります。制度の開始前、2026年中ごろからあらかじめ許可の申請を受け付ける予定のようですが、現時点では具体的な申請開始日は未定です。
現時点では育成就労制度の開始は2027年の予定です。移行措置としては、開始日前に入国し、開始日時点で現に技能実習を行っている場合は引き続き技能実習を行うことができます。開始日前に技能実習計画(育成就労制度開始日から3か月以内に開始することを内容とする技能実習)の認定の申請をしている場合は、開始日以後に技能実習生として入国できる場合があります。また、これらの場合には、技能実習制度のルールが適用され、技能実習から育成就労に移行することはできないとされています。
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