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近年の経済のグローバル化に伴い、中小企業でも外国の工場と提携を結び、直接商品の発注をかけるなどの場面も増加してきました。
このような場合、頻繁に外国にある関係工場とのやり取りが発生します。打ち合わせの内容に機密事項を含む場合も少なくありません。そのため、自社で”正確に現地の言葉を扱う事の出来る外国人スタッフを雇用したい”という当事務所へのご依頼も増えてきました。
外国人の方が日本で働くためにはビザが必要です。本ぺ-ジでは、こういった翻訳・通訳業務で外国人の方を雇用するのビザの取得について解説していきます。
なお、翻訳・通訳業務で雇用するためにわざわざ外国から呼び寄せるのは一部の会社に限られるため、ここでは日本国内で外国人の方を募集することを前提にしています。
就労ビザの種類は技術・人文知識・国際業務、特定技能、企業内転勤、経営・管理、技能など多数にわたりますが、翻訳・通訳業務の場合、対応するビザは基本的に「技術・人文知識・国際業務」です。この「技術・人文知識・国際業務」のビザはいわゆるホワイトカラーの方のための在留資格です。
「技術・人文知識・国際業務」では、外国人の方がこれまで学んできた知識や仕事で培ってきた経験、母国の文化や言語に関する知識と関連性のある業務であれば行うことができます。翻訳・通訳業務はこの条件に当てはまり、技術・人文知識・国際業務のうち”国際業務”の分野に含まれます。入管法上、この国際業務にあたるのは「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性に基づく一定水準以上の専門的能力を必要とする業務」とされています。
「技術・人文知識・国際業務」のうち国際業務の分野にあたる場合、原則として”翻訳・通訳業務について3年以上の実務経験を有すること”が求められます。しかし、”大学を卒業している方”であれば専攻に関係なくこの実務経験は不要となり、翻訳・通訳業務での「技術・人文知識・国際業務」を取得できる可能性があります。
ここでいう”大学”は日本国内の大学であっても海外の大学であっても条件を満たします。しかし、”大学を卒業しているだけ”では許可されるための最低限の条件をクリアしているだけです。実際に許可されるかは別問題になります。大学卒業の場合に実務経験が求められないのは大学で日本語能力を身に着けている場合が多いため、このような取り扱いになっている点にご注意ください。
大学を卒業しているだけで無条件に認められるわけではありません。したがって、海外の大学卒業した場合に大学で日本語に関する履修が全くない場合などはこの方法で許可を得ることは難しいでしょう。
日本の大学の場合であっても、何らかの日本語に関する単位を取得していることが望ましいです。ただし、他の日本人の方には免除される日常会話のような授業内容の場合は日本語に関して学んだとは判断されませんのでご注意ください。
入国管理局は、単に条件をクリアしているかだけではなく、実際に外国人の方がその職務内容の仕事を行うことができるかどうかまで考えます。そのため、翻訳・通訳業務で「技術・人文知識・国際業務」を取得する場合には、日本語能力検定試験のN1またはN2を取得している、あるいはBJTビジネス日本語能力テストでJ1評価を受けているなどの客観的に日本語能力があることを証明できる資料があると申請がスム-ズに進みます。これは大学を卒業している場合も同様です。
専門学校を卒業している方も、翻訳・通訳業務での「技術・人文知識・国際業務」を取得できる場合があります。例えば、翻訳・通訳に関する専門学校を卒業している場合です。また、国際ビジネス学科において、貿易論・マーティング等の経営学に係る科目を中心に履修している方が、翻訳・通訳に特化した科目も履修している場合にも取得できる可能性があります。
このような場合であれば「技術・人文知識・国際業務」の”国際業務”の条件をクリアしていなくとも”人文知識”の条件をクリアしているためです。「技術・人文知識・国際業務」の”人文知識”は、職務内容が学校で学んだ内容を活用するものである場合などに認められます。
なお、既に他社で働く際に「技術・人文知識・国際業務」を取得している方の場合、転職時に新たに「技術・人文知識・国際業務」を取得する必要はありません。所属機関に関する届出でだけで済みます。しかし、更新の際に実質的に新規取得の場合と同様の審査になるため、このような場合には「就労資格証明書」を取得しておくことをお勧めします。
次に通訳・翻訳業務で外国人の方のビザ申請をする際にはどのようなことに注意すれば良いのかについて記載します。
当然ながら、会社の事業活動に通訳・翻訳業務が必要であることが求められます。外国人の方の顧客がほとんどない会社の場合には通訳・翻訳業務での「技術・人文知識・国際業務」は許可されません。
通訳・翻訳業務での「技術・人文知識・国際業務」を国際業務として申請する場合、学校で学んだ内容と行う予定の職務とに関連性は求められません。そのため、抜け道として利用されないように通訳・翻訳業務の必要性があるかどうかについてはきちんと審査されます。
そこで、「雇用理由書」などを提出し、会社の事業活動に通訳・翻訳業務が必要であることを説明する必要があります。「雇用理由書」を提出しなかった場合、追加資料として「雇用理由書」の提出が求められる可能性が高くなります。追加資料を提出するまでの間は審査がストップします。許可が下りるまでの時間が長くなってしまうため、あらかじめ提出しておいた方が良いでしょう。
通訳・翻訳の仕事に十分な業務量があることが必要です。十分な業務量がない場合、外国人の方が申請した通訳・翻訳以外の仕事をする可能性が考えられます。この点、「技術・人文知識・国際業務」では知識や経験を必要としない単純労働は認められません。したがって、入国管理局では通訳・翻訳業務での「技術・人文知識・国際業務」の審査の際、仕事に十分な業務量があるかどうかも審査しています。
近年はこの審査の基準が厳しくなりつつあるように感じます。このため、前述の理由書で会社の業務で通訳・翻訳の必要性があることを説明するのと同様に通訳・翻訳の仕事に十分な業務量があることについても「雇用理由書」で丁寧に説明する必要があります。良く”就労ビザでは理由書が大切”と言われるのはこのような理由からです。
「技術・人文知識・国際業務」ののような就労系在留資格では報酬の額が日本人の額と同等以上であることが求められます。外国人の方を不当に安く雇用することを禁止するための、法律で明確に規定されています。
そのため、報酬の額に問題があると判断された場合には即座に不許可の判断がされます。報酬の額は通常は雇用契約書で確認するので、「技術・人文知識・国際業務」で外国人の方を雇用する場合にはビザ申請の前に雇用契約をする必要があります。この際、他の日本人社員の雇用契約書を提出して報酬の額が日本人の額と同等以上であることを証明することまでは必要ありません。
報酬の金額は一般的に月額が20万円以上あれば問題ないですが、同じ会社内で同様の仕事内容をしている日本人の方より明確に報酬額が低い場合には後から問題になることもあるのでご注意ください。
ここまでは通訳・翻訳業務で外国人の方を雇用する際に新たにビザを取得する場合について記載しました。
しかし、「日本人の配偶者等」の”身分系在留資格”をお持ちの方を採用する場合には、ほとんど日本人の方と同じ流れで就労を開始することができます。「日本人の配偶者等」は日本人の方と結婚している外国人の方が取得できる在留資格等です。このような身分系在留資格は就労制限がありません。したがって、「日本人の配偶者等」の在留資格をお持ちの方は新たにビザを取得することなくすぐに通訳・翻訳業務を行うことができます。「永住者」「定住者」等の場合も同様です。
このように身分系在留資格をお持ちの方を雇用するのがもっとも簡単です。しかし、問題点もあります。身分系在留資格はその身分を失うと在留資格も同時に失います。「日本人の配偶者等」の場合には離婚すると在留資格を失います。「永住者」の場合には取消し決定を受けた場合です。この場合、少なくとも6ヶ月以内に日本を出国するか、他の在留資格への変更申請をする必要があります。このように、”身分系在留資格”は会社と関係のない個人の事情により失う可能性がある在留資格である点にはご注意ください。
また、外国人の方を雇用した際には雇用保険又は外国人雇用状況届出書の提出が必要です。日本人の方と結婚されていても日本国籍を取得していない限り外国人として扱われます。したがって、日本人の方と結婚している外国人の方を雇用している場合でもこのような届出は必要となります。この点が日本人の方を雇用した場合と若干ですが異なる点ですが、実質的には雇用保険に加入する場合が大半であるため、あまり問題にはなりません。アルバイトの方を採用する場合などはご注意ください。
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