就労ビザの雇用理由書には何をどのように書けば良いのか

東京出入国在留管理局のWebサイトを見ると、申請の際に提出する書類が記載されています。

しかし、ここに記載されている書類は申請を受理するために必要な最低限の内容しか記載されていません。ビザ申請の際に提出する資料は個別の状況により大きく異なるため、そのすべてを掲載することはできないためこのような形になっています。

掲載されていないにもかかわらず、就労ビザで多く場合に提出を求められるのが「雇用理由書」です。採用理由書や申請理由書という事もあります。

この書面については入国管理局が定める形式はありません。そのため、一般の方がこの書類をご自身で用意しようと考えて際、何をどのように書けば良いかわからない場合も少なくありません。

そこで、本ペ-ジでは雇用理由書にはどういったことを書けば良いかについて大まかに記載していきます。なお、記載例は掲載しません。これは、記載例をそのまま使用することは就職活動でエントリーシートを使いまわすのに等しく、非常にリスクが大きいためです。

そもそも理由書とは

「雇用理由書」とはそのままの意味で、主に会社で外国人の方を採用する理由について書かれた書面です。しかし、この書面で単にそれのみを書けば良いわけではありません。

ビザ申請は原則として書面審査です。スタ-トアップビザなどの一部の例外を除き、面接等は行われません。

直接対面で説明する機会がないにもかかわらず、ビザ申請では許可の可否に審査官の裁量が非常に大きく影響します。そのため、何らかの手段で審査官に申請人の方がビザ取得の条件を満たしていることを審査官に説明する必要性が生じるのですが、そのためにこの雇用理由書を用いるのが一般的になっています。

分量はA4サイズの用紙で1~2枚分です。量を多く書けば良いわけではありません。必要な事項を”簡潔に””わかりやすく”書くことが求められます。

つまり、雇用理由書は申請人がビザ取得の条件を満たしていることを説明する”説明書”であり、説明が足りない分の補足をすることで審査をスムーズに進めてもらうための資料です。

そもそもビザ申請の際に審査官は何を確認しているのか

次に、ビザ申請の際に審査官は何を確認するのかについて記載します。審査の際、審査官が重視し、確認するのは主に以下の内容になります。

【審査官が審査で重視する点】
・雇用する会社の事業活動が安定しているか
・採用条件は適切か
・申請人の学歴や経歴がビザ取得の条件を満たしているか
・採用後、申請人が就く業務内容が適切であり、申請した職務内容での業務量が十分にあるか
・納税義務や届け出義務等のこれまでの在留状況は良好か など

それぞれについて見ていきます。

雇用する会社の事業活動が安定しているか

雇用する会社の事業活動が安定しているかについては会社の創業年数、資本金、従業員数、決算報告書などから判断します。海外から来た外国人の方の就労先の事業活動が安定していない場合には当然そこから報酬を得る外国人の方の生活も不安定になります。場合によっては生活保護等が必要になることもあるでしょう。そういった事態を避けるため、ビザの取得時に雇用先の会社の事業活動に安定性があるかどうかを確認します。

採用条件は適切か

採用条件は適切かどうかについては、同じ会社の同じ職務内容の日本人の方と同程度の待遇かどうかをチェックします。外国人の方を不当に冷遇していないかを確認するためです。とは言え、通常は一般的な基準と比較しての判断になり、月収が20万円を超えている場合には大抵問題なしと判断されます。ただし、この場合でも同じ会社で同じ職務内容の日本人の方よりも報酬が明確に少ないことが後から発覚した場合には更新ができない可能性があるのでご注意ください。

申請人の学歴や経歴がビザ取得の条件を満たしているか

例えば「技術・人文知識・国際業務」は原則として就労する職務内容に関連する内容を大学や専門学校で学んでいることが求められます。こういった学校を卒業していない場合には10年以上の実務経験が必要です。審査官は提出された書類からこれらの事柄が確認できるかをチェックしています。この点はインターネットで情報を得やすいため、申請の際に意識している方が多い点かと思います。

採用後、申請人が就く業務内容が適切であり、申請した職務内容での業務量が十分にあるか

就労ビザではそれぞれの就労ビザの種類ごとに就くことのできる業務の内容は決まっています。例えば「技術・人文知識・国際業務」の場合には単純労働に該当する職務を行うことはできません。

一般的に日本人の方を採用する際、採用してからどの業務を割り当てるのかが通常となっています。しかし、外国人の方を雇用する場合ではこの順序が逆で、業務内容を決めてから採用しなければなりません。この点が外国人の方を採用する際に注意したい点です。採用してから職務内容を変えることはできません。

また、申請した職務内容での業務量が十分にあるかについても確認されます。この点が盲点になりやすいのでご注意ください。例えば「技術・人文知識・国際業務」で通訳をすることを職務内容としたにもかかわらず外国人の来客件数が少ない場合や、同じく「技術・人文知識・国際業務」でシステム開発の仕事に就くとしておきながら会社の従業員数が10名以下の場合には申請した職務内容での業務量が十分にないとして不許可の判断がされます。

納税義務や届け出義務等のこれまでの在留状況は良好か

当然ながら納税義務を怠ったり、資格外活動許可でのアルバイトで週28時間の制限をこえている方は在留状況が好ましいとは言えません。期限内に行うことを義務付けられている届出を怠っている場合も同様です。そしてこれまでの在留状況が好ましくない方はビザ申請の際に非常に厳しく判断されます。特に近年は納税義務などの履行についてはかなり厳しく見られます。

以上のようなことを入国管理局は提出された資料から確認しています。したがって、このような入国管理局が重視して確認している内容について理由書で説明し、審査官に申請人の方にビザを交付して良いと判断してもらうことが理由書の意義になります。

理由書にはどのようなことを書けば良いのか

いよいよ理由書にはどのようなことを書けば良いのかについて記載していきます。前述のように、入国管理局が確認したいことについて記載していけば良いという事になります。ここでは当事務所が雇用理由書を作成する際に実際に記載している内容を紹介しています。

申請人について記載する

まずは申請人の方の氏名、国籍、生年月日を記入してください。

(申請人)
・氏名
・国籍
・生年月日

記載内容はパスポ-トの記載方法とそろえると良いです。ミドルネ-ムのある方などの場合も同様です。他の資料を確認せずとも誰の資料であるのかを確認できるようにしておきましょう。こういう細かい配慮の積み重ねが審査官の心証を良くします。

所属機関について

次に勤務先の会社について記載します。

・会社名
・事業内容
・設立年月日
・資本金
・会社HPのURL

この後に事業内容についてもう少し詳しく書きます。審査官は勤務先の事業内容についても確認しています。申請人の方の職務内容が適切か否かを判断するためです。この部分の記述ではできるだけ専門用語は避けてください。ここで記載する内容は申請時に提出する会社パンフレットの記載とそろえましょう。

また、事業の安定性を示すのに直近の売り上げを記載しましょう。この数字は提出する決算報告書の数字と一致させてください。

申請人の採用条件、業務内容

次に申請人の方の採用条件を記載します。

・役職
・職務内容
・就労予定期間
・報酬の額

ここで記載する職務内容の表現は申請書の職務内容や雇用契約書の職務内容とそろえた方が良いでしょう。また就労予定期間を定めていない場合には"期限の定めなし"と記載してください。配属予定の部署の名前や実際の勤務地についても記載します。

職務内容についてはできるだけ具体的に詳しく記載してください。ここでの記載内容が不明瞭であったり、疑義を持たれるものであった場合には追加資料として「職務内容説明書」を求められる場合があります。この職務内容についての記載が理由書で最も重要な部分かもしれません。

申請人の採用理由

採用までの経緯を説明し、申請人の方の学歴や経歴が就労予定の業務内容と関連性があることについて触れてください。あわせて業務量が十分にあることについてもアピールします。日本語能力検定試験でN1やN2評価を取得している場合には必ず記載しましょう。

また、ここで外国人スタッフであることの必要性について記載しておくと良いでしょう。採用するのは日本人でも良いのではないか、外国人である必要はないのではないかと判断される場合には審査は厳しくなります。

なお、会社が住居探しや手続きのサポートなどを行う場合には記載しておくと審査官の心証は良くなります。

これまでの在留状況

これまでの在留状況について記載します。具体的には納税義務などの公的義務を果たしている事などです。特に所属機関変更の届出などを期限内に行っていないなかった方の場合にはここでその理由を説明をするようにしています。

まとめ

最後にまとめて完成となります。当事務所では文末は”それでは〇〇申請をお認め下さいますよう、心よりよろしくお願い申し上げます。”の様にして締めるようにしています。

以上になります。本ぺ-ジをお読みになったことで雇用理由書作成に少しでもお役に立てれば幸いです。

当事務所では雇用理由書のみの作成も承っております。お気軽にご相談ください。


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