大学卒業者の方でも「技術・人文知識・国際業務」が不許可になる場合について解説します

当事務所のWebサイト、”在留資格「技術・人文知識・国際業務」(3)海外の大学卒業者の許可事例”および”在留資格「技術・人文知識・国際業務」(4)日本の大学卒業者の許可事例”に引き続き、出入国在留管理庁のWebサイトの許可・不許可の事例について、なぜ許可・不許可になるかを当事務所の見解を添えて解説しています。

あくまで当事務所の見解のため、別の解釈も可能な点はご了承ください。本ページでは大学卒業者の方が「技術・人文知識・国際業務」ビザを申請した場合の不許可事例について記載しています。

不許可事例を知り、その原因を避けるようにすることで許可を得る可能性が高まるという考えから本ページを作成しています。ご参考になれば幸いです。

大学を卒業した方の不許可事例 引用元:出入国在留管理庁のWebサイト

下記の事例は大学卒業者の方が「技術・人文知識・国際業務」ビザを申請し、不許可とされた事例です。一般的に、大学卒業の方の場合には他の専門学校卒業の方や実務経験での証明をする方と比べて許可されやすい傾向があり、不許可の判断がされるのは明確に「技術・人文知識・国際業務」の条件を満たしていない場合になります。

【事例1】
経済学部を卒業した者から、会計事務所との契約に基づき、会計事務に従事するとして申請があったが、当該事務所の所在地には会計事務所ではなく料理店があったことから、そのことについて説明を求めたものの、明確な説明がなされなかったため当該事務所が実態のあるものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に該当する活動を行うものとは認められないことから不許可となったもの。

「技術・人文知識・国際業務」は日本で事務職に就く方のための在留資格です。この在留資格では卒業した大学で学んだ内容と職務内容に関連性が求められます。

この点、本事例のように大学の経済学部を卒業して会計事務所に勤務する場合にはこの関連性が認められる可能性はかなり高いものになります。しかし、本事例において実際に申請書に記載された住所に存在していたのは会計事務所ではなく料理店でした。入管で行われるのは書類審査ですが、実はその際にgoogleマップなどでその所在地を確認されることがあります。本事例ではこの確認の際に発覚したのだと思います。

ここで即座に不許可にならず説明を求めたのは審査官の方の温情です。本来この時点で不許可になるケースも少なくありません。

入管でビザの申請をすると「追加資料提出通知」が届くことがあります。これは入管が申請された内容に何らかの疑義を抱いている場合に届きます。したがって、この通知書に適切に対応しないと基本的に申請は不許可になります。本事例で”説明を求めたものの、明確な説明がなされなかった”というのはこの場合に該当したのでしょう。

したがって、本事例からは”申請内容に虚偽がある場合”、”追加資料提出通知に適切に対応しなかった場合”には不許可になると考えることができます。

【事例2】
教育学部を卒業した者から、弁当の製造・販売業務を行っている企業との契約に基づき現場作業員として採用され、弁当加工工場において弁当の箱詰め作業に従事するとして申請があったが、当該業務は人文科学の分野に属する知識を必要とするものとは認められず、「技術・人文知識・国際業務」の該当性が認められないため不許可となったもの。

前述のように「技術・人文知識・国際業務」は日本で事務職に就く方のための在留資格です。この在留資格では学歴と職務内容の関連性が重要視されます。

したがって、本事例のように明らかに単純作業をメインとして行う場合には「技術・人文知識・国際業務」を取得することはできません。仮に現場作業員ではなく総務や会計などの一般事務職での採用であれば取得できる可能性はあったかもしれません。

まとめると、本事例からは「技術・人文知識・国際業務」取得の申請において”単純作業を主業務としてする申請”は不許可になると判断することができます。

【事例3】
工学部を卒業した者から、コンピューター関連サービスを業務内容とする企業との契約に基づき、月額13万5千円の報酬を受けて、エンジニア業務に従事するとして申請があったが、申請人と同時に採用され、同種の業務に従事する新卒の日本人の報酬が月額18万円であることが判明したことから、報酬について日本人と同等額以上であると認められず不許可となったもの。

時代が変わったにもかかわらず、今だに外国人の方を”安く使える労働力”という大きな誤解をしている方がいらっしゃいます。少子化に伴い人手不足が年々深刻化してくるであろう日本において、優秀な外国人の方が日本人と同様に評価される必要性はより高まってきているため、そういった方はこれからご苦労をされる可能性は高いでしょう。

そもそも「技術・人文知識・国際業務」では外国人の方と”日本人と同額程度の報酬”の雇用契約を結ぶことを在留資格取得の条件としています。本事例のように明確に他の日本人の方に比べて低い報酬の場合には当然に不許可になります。これに関しては外国人の方を不当に扱っているとして国際問題になる可能性もあるため、入管の判断はかなり厳しいものになっています。

したがって、本事例からは”同じ様な仕事をする日本人と同程度以上の報酬でない場合”には不許可になると考えることができます。

【事例4】
商学部を卒業した者から、貿易業務・海外業務を行っている企業との契約に基づき、海外取引業務に従事するとして申請があったが、申請人は「留学」の在留資格で在留中、1年以上継続して月200時間以上アルバイトとして稼働していたことが今次申請において明らかとなり、資格外活動許可の範囲を大きく超えて稼働していたことから、その在留状況が良好であるとは認められず、不許可となったもの。

「技術・人文知識・国際業務」取得の条件に資格外活動許可の就労制限に違反してはならないといった記載はありません。そのため、この判断は一見すると「技術・人文知識・国際業務」の条件にないことから不許可の判断がされているようにも見えます。

しかし、在留資格について定める入管法には、在留資格の変更や在留期間の更新の申請をするにあたり、「適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り、これを許可することができる」とされています。つまり、法定の条件を満たしたとしても、入管は許可するか否かを個別の状況に応じて判断することができます。

この”個別の状況”の判断の際、それまでの在留状況が主な判断材料になります。年金や税金をきちんと払っていることの他、法令の遵守もまたそこに含まれます。そのため、明確に法令違反となる資格外活動許可の就労時間制限違反は不許可と判断するのに十分な理由になります。

したがって、本事例からは”資格外活動許可の就労時間制限違反は不許可になる原因となる”と考えることができます。入管の方のお話しだと、留学生の方が卒業後に内定が出て「技術・人文知識・国際業務」をした際に不許可になる理由で最も多いのがこの理由によるものだそうです。

【事例5】
経営学部を卒業した者から飲食チェーンを経営する企業の本社において管理者候補として採用されたとして申請があったが、あらかじめ「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事することが確約されているものではなく、数年間に及び期間未確定の飲食店店舗における接客や調理等の実務経験を経て、選抜された者のみが最終的に「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務へ従事することとなるようなキャリアステッププランであったことから、「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事するものとして採用された者に一律に課される実務研修とは認められず、不許可となったもの。

前提として、飲食店の店舗における接客や調理等の業務は基本的に単純作業に分類されるため「技術・人文知識・国際業務」で行うことはできません。しかし、務研修期間が予定する雇用期間の大半を占めず、日本人・外国人問わず実務研修が実施されており、実務研修と今後の職務内容に合理的な関連性がある場合には単純作業を行う実務研修が認められる場合もあります。

とはいえ、この事例で最も問題なのは、初めから「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事することが確約されているものではなく、条件を満たした場合に「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務へ従事するという点です。ビザ申請では、このように”〇〇をした場合には〇〇になる”といった条件付きの申請は一切認められていません。

したがって、本事例でからは”満たした条件によって職務内容が決定されるような申請”は不許可になると判断することができます。


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