永住許可の理由書に何を書き、どのように書けば良いか

永住許可申請の際、提出する書類の中に「理由書」というものがあります。

ビザ申請は書面審査で行われ、審査官との面接等はありません。書類審査のみです。

この点、よく誤解されている方が多いのですが、この理由書では申請する方が日本に永住したい理由だけでなく、これまでの経歴や永住許可の要件を満たしていることもアピ-ルする必要がある書類になります。ただ永住したい理由をやみくもに書けば良いわけではありません。

永住許可の要件は大まかに以下の通りです。

【永住許可の要件】
・素行が善良であること
・独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
・その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

”素行が善良であること”については、法務省が作成した永住権に関するガイドラインで「日本の法律を遵守し、日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること」とされています。

具体的には、窃盗などの犯罪行為はもちろん、交通違反であっても回数が多いと素行が善良であるとは言えないと判断されることもあります。軽微な交通違反であっても審査の対象期間の間に5回以上あると多いと判断されるかもしれません。

”独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること”も同様にガイドラインで「日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること」とされています。

「日常生活において公共の負担にならず」とは生活保護を受給する必要のない状態を指します。そのため、永住許可の審査では申請する方の職業や年収、保有資産等が確認されます。

なお、永住許可の場合、この独立生計条件は申請する方だけでなく、配偶者の方等の状況も含めた世帯単位で判断されます。そのため、永住許可の申請者の方の年収が低くとも、配偶者の方の年収が高い場合には許可されるケースもあります。

”その者の永住が日本国の利益に合すると認められること”はガイドラインで「原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する」や「罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること」等とされています。

特に公的義務の履行についての判断はかなり厳しく、納付義務を履行していない場合は当然として、納付期限を過ぎてから納付した場合なども不許可になる可能性が非常に高くなります。この点は後からでも納付していれば良いという帰化申請と異なりますのでご注意ください。仮に審査対象の期間内に納付期限を過ぎてから納付している場合にはその期間が審査対象から外れるまで待ってから申請する方が良いでしょう。

永住許可申請で提出する理由書では申請する方が日本に永住したい理由の他にこれらの条件を満たしていることを盛り込む必要があります。したがって、結論としては以下のような項目について記載していくことになります。

【永住許可申請の理由書に記載すべき事項】
・来日してから今日までの経緯
・現在の勤務先や仕事の内容、その他生活の状況について
・預貯金や保有資産
・年金や健康保険等の支払い状況
・永住権を取得したい理由
・身元保証人についての説明

これらの内容をA4サイズの用紙で1~2枚の分量にまとめていきます。理由書は原則として日本語で書いた方が良いでしょう。作成はパソコンでも手書きでもどちらでも問題ありません。当事務所ではパソコンで作成しますが、最後にご本人のご署名をいただくようにしています。

以下では記載する内容それぞれにつき簡単に解説していきます。

※厳密に言えば日本人配偶者の方の場合であれば永住申請する場合には理由書は必須書類に含まれていません。しかし、この場合でも後から追加資料として求められることがあります。

来日してから今日までの経緯

来日してから今日までの経緯を書きます。この部分は履歴書のような形式で書くと良いでしょう。どこの時点から書かなくてはならないという決まりはありませんが、一般的には最終学歴から職歴などを記載していきます。その際、空白の期間がないようにしてください。この部分で居住要件をクリアしていることをアピ-ルします。

永住許可申請で特に注意すべきことの一つが過去に出している申請書類と整合性です。永住許可が不許可になる理由で多いのが、過去に出した書類と永住許可の際に提出した内容に相違がある場合です。できる限り過去に提出した申請書類を確認しながら記載していくことをお勧めいたします。

仮に、過去に提出した内容に誤りがあった場合にはそのことを正直に書いたほうがダメ-ジは少ないかと思います。

現在の勤務先や仕事の内容のほか生活の状況について

現在所持しているビザや努めている勤務先、役職、仕事内容、月収と年収について記載していきます。入社してからの年数周りとの人間関係についても触れるようにしましょう。この部分で独立の生計の要件をクリアしていることをアピ-ルします。

仕事内容を説明する部分では業界内の専門用語を多用しないように注意してください。永住許可の許可・不許可は審査官が個別に判断するため、審査官の心証は非常に重要です。当然ながら、わかりやすい言葉で説明したほうが印象が良くなります。

また、結婚や子ども、住居の大まかな場所やその住居が所有か賃貸かなどについても記載します。

預貯金や保有資産

基本的に安定した定期収入がある場合には預貯金や保有資産があることは求められません。入国管理局の審査では現在資産があるかよりも定期的な安定収入があることを重視する傾向があるからです。

しかし、永住許可の要件に「将来において安定した生活が見込まれること」とあるため、預貯金や保有資産がある場合には積極的に書いて良いと思います。ただ、簡単に記載するだけで十分でしょう。なお、保有資産をアピールしようとして申請直前に多くの金額を口座に入金することは避けた方が良いかと思います。

年金や健康保険等の支払い状況

前述のように、近年の傾向として、永住許可の審査では年金と健康保険の納付状況について厳しく審査されます。2024年3月の閣議決定では永住者の在留資格で在留する外国人の方が税や社会保険料を納めない場合には永住許可を取り消せるようにする規定も決定の中に含まれていました。

そのような状況であることを踏まえつつ、この部分の記載でも永住が日本国の利益に合するという条件をクリアしていることをアピ-ルしていきます。

住民税や国税は直近の過去5年分、年金や健康保険は直近の過去2年間が審査対象です。年金や健康保険の納付について、この期間が会社などで厚生年金や健康保険等に加入していた場合は問題ないことが通常です。

しかし、ご自身で納付していた場合には念のため「ねんきんネット」等で期限内に納付されているかご確認ください。納付されていても納付期限後であれば、永住許可申請においては大きなマイナスになります。場合によっては、申請する時期を遅らせて、その時期を審査の対象外にした方が良いかもしれません。

永住権を取得したい理由

日本に永住したい理由を書いていきます。その際は以下のような点を盛り込むと良いでしょう。

【永住権を取得したい理由に盛り込みたい事柄】
・現在の自分の状況からどうして永住を考えるようになったのか
・日本のどのような点が好きなのか
・これから日本でどのように生活していきたいのか

これらのについて具体的な話も交えて記載していきます。熱意を伝えるのは大切ですが、あまり長くなりすぎないようにご注意ください。

最後に

当事務所が永住許可の理由書を作成する際にはこのような項目を意識して作成をしています。永住許可の理由書を作成する際に最も参考になるのは法務省の永住ガイドラインの最新版です。そこまで頻繁というわけでもありませんが、このガイドラインもある程度の期間で更新されます。できるだけ最新のガイドラインをご確認ください。本記事は令和5年12月1日改訂版の内容をもとに作成されています。

昨今はネットを検索すると理由書の例が多数出てきます。これらを参考にするのは問題ないのですが、そのまま使用するのは避けた方が良いでしょう。就職活動をしたことのある方なら想像しやすいと思いますが、エントリ-シートの使いまわしと同様だからです。永住許可申請は許可の可否に対する審査官の裁量が大きいため、かなり大きなマイナス要素となる場合が考えられます。このため、本ペ-ジでは記載例は掲載していません。

ご自身での作成が不安な方はぜひ当事務所にご相談ください。理由書の作成のみのご依頼も承っております。この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。


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