外国人の方を採用する際の手続きや注意点について解説します

厚生労働省による「外国人雇用状況」の届出状況まとめによると、令和5年10月末時点で日本で働く外国人労働者数は初の200万人超えました。

具体的には 前年から225,950 人増加した2,048,675 人で、届出が義務化された平成19年以降、毎年のように過去最高を更新し、今回も対前年増加率は 12.4 %と前年の 5.5 %から 6.9 %も上昇をしています。

このように外国人採用の需要が増加している理由の一つは高齢化日本が抱える人手不足でしょう。この人手不足を感じている企業は特に中小企業で多く、地域的に見ても東京、大阪、名古屋の三大都市圏以外も三大都市圏と同様に全国的に高まっています。産業別にみると、正社員では製造業・建設業での需要が特に大きいようです。

このような状況に対して日本政府も雇用確保に尽力している最中です。例えば、令和6年年3月現在時点で現行の技能実習制度に代わる新たな外国人雇用の制度「育成就労」制度の検討が進められています。

このように人手不足に対する対策として注目されている外国人雇用ですが、”外国人ということで複雑な手続きが必要なのではないかと”といった理由から躊躇されている方も少なくないように思えます。そこで、このページでは外国人の方を採用する際の良い点と増える負担、採用する際の注意点や必要な手続きについて採用する会社様向けに解説していきます。

(1)外国人の方を採用する際の良い点と増える負担

まず、実際に外国人の方を採用する際の良い点についてです。

外国人の方を採用する際の良い点として最も重要なのがやはり人手不足の解消でしょう。日本人の高齢者人口(65歳以上の人々)の割合は2060年には28.2%(世界平均17.8%)になると予測されています。結果として、数少ない日本人の若い人材の大半は大手企業に流れ、中小企業では求人募集をしても応募がない状況は加速する懸念があります。そのため、外国人の方を採用する方向に活路を見出すのも一つの考え方と言えるでしょう。

また、外国人の方であれば就労先を選択する基準も日本人とは異なっているため、会社の規模の大小にかかわらず優秀な人材を確保できる可能性があります。

外国人の方に母国語の通訳・翻訳をお願いすることも可能です。例えば、外国の工場と提携して日本国内でその商品を輸入販売する場合、現地との綿密な打ち合わせが必要になりますが、内容に企業秘密等が関係することが少なくないため、社員に通訳・翻訳ができるスタッフがいると非常に助かります。

その言語能力を生かしてインバウンド(訪日外国人旅行)顧客の取り込みによるマーケットの拡大なども考えられます。文化の違いにより生まれる日本人にはないその多様なアイデアを貴社に取り込むことなども期待できるでしょう。

このようなメリットの反面、外国人の方を採用すると日本人の方を雇用した場合に比べて負担が増える部分もあります。

一点目は入社までの時間が日本人に比べて非常時多くかかるという事です。外国人の方が日本で就労する場合、その職務内容に応じた在留資格の取得が必要になります。外国人の方が現在お持ちの在留資格で許可されている活動内容が貴社で行う予定の職務内容と合致していない場合には在留資格変更申請が必要なため、書類の収集や入国管理局の審査機関などで採用を決めてから就労を開始できるようになるまで少なくとも1ヶ月以上はかかるでしょう。海外から呼び寄せる場合には2~4ヶ月ほどかかるのが通常です。

また、在留資格には在留期限が定められているため更新が必要です。その手続きには会社側から出さなければいけない書類もあります。この中には決算書なども含まれていることがあるため、これらの書類を外国人の方に渡したくないという理由で我々のような行政書士にご依頼いただくこともあります。

さらに、生まれ育った国の違いから文化や慣習の違いも多くあります。特に宗教などの信仰への配慮は絶対に必要です。外国人の方ご本人のご性格や言語能力にもよりますが、既存の日本人スタッフとのコミュニケーションがスムーズにいかないことも考えられます。

このように外国人の方を採用するメリットは非常に大きなものになりますが、それにより負担が増える部分もあります。これらを踏まえた上で外国人の方の採用をご検討ください。

(2)外国人の方を実際に採用する際の注意点

採用の際に最も注意することは、採用する外国人の方が現在お持ちのビザで許可されている活動内容についてです。

就労系の在留資格では在留資格ごとに許可される活動内容には制限があります。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格をお持ちの方をホールスタッフのような現場での単純作業を伴う職務内容で雇用することはできません。

これを知らずに許可されている内容を確認をしないまま採用してしまい、許可されている活動範囲外の職務内容をさせてしまうと、外国人の方ご本人はもちろん、採用した会社側も場合によっては不法就労助長罪といった罪に問われる可能性があるため、許可されている活動内容は採用の際には十分に注意を払う必要があります。

そのため、採用面接時に在留カードに記載されている内容は必ずご確認ください。資格外活動内容の許可などはカードの裏面に記載されている内容もあります。この際、パスポートの有効期限もあわせてチェックするようにしましょう。

また、当然ながら外国人の方を雇用する際にも日本人の方を雇用する場合と同様に雇用契約が必要です。

日本の民法では諾成契約という当事者の合意の意思表示のみで契約が成立する形式を採用しています。そのため、雇用契約自体は契約書がなくとも成立します。しかしながら、就労ビザを取得する場合には雇用契約書の提出が義務付けられていますし、契約書を作成しておくことは後々のトラブルになる可能性を減らすために非常に重要です。

この契約書には”出入国管理局から在留資格変更許可が得られなかった場合には本契約は無効とする”や”本契約の効力は、就労可能な在留許可を得ることを停止条件とし、その効力を生じる”といった条件を付記するのが一般的です。このような法的な表現は日本語として非常に難しいため、他の労働条件とともに外国人の方が理解しているか十分に確認するようにしてください。

最後の注意点として、外国人を採用したり、外国人の方が離職した場合には”届出”が必要になります。この届出についての詳細は次の”(3)採用する際の手続き”の項目に記載します。

「採用通知」でもビザ申請はできるのか?

「採用」と「内定」には雇用する会社側と雇用される側の方との間で入社の意思確認ができているかどうかの違いがあります。

「採用」とは会社側が雇用したい旨を求職者側に採用通知などで一方的に伝えた状態で、この段階では求職者側から入社の承諾は得られていないため雇用契約は締結されていません。

これに対して、「内定」はこのような採用通知を受領した求職者側が会社に入社する意思を伝え、雇用契約を締結し入社することを約束した状態を指します。

前述のように就労ビザの申請では「雇用契約書」の提出が義務付けられています。そのため、採用通知を送っただけでは就労ビザの申請をすることはできません。申請前に雇用契約を結び、内定を出す必要があります。

(3)外国人の方を採用する際の手続き

外国人の方を雇い入れた場合、どのような手続きをするかは雇用保険に入るか否かで異なります。

アルバイトであっても1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の雇用見込みがある場合には日本人の場合と同様に雇用保険への加入が義務付けられています。基本的に外国人の方を雇い入れた場合のはそのことを報告する義務が生じるのですが、雇用保険の加入の届出をした場合にはこの報告をしたものと判断されます。これに対して雇用保険に加入しない場合には所轄のハローワークへ「外国人雇用状況届出書」の提出が必要になります。

雇用保険の場合には雇い入れた翌月の10日まで、ハローワークへの「外国人雇用状況届出書」の提出は雇い入れた翌月の月末までがそれぞれの提出期限になります。外国人の方を採用した会社の届け出義務については下記のリンク先にも記載しています。ご参考になれば幸いです。

また、前述のように現在お持ちの在留資格と貴社での職務内容が異なり、許可されている在留資格の範囲外であった場合には「在留資格変更申請」が必要になります。一般的に在留資格変更申請は審査に最低でも2~4週間はかかります。資料が不足していたり、記載内容に疑義があると追加資料の提出を求められ、この期間が延びる可能性があります。

貴社での職務内容が現在お持ちの在留資格で許可されている範囲内であれば、このような在留資格変更申請は不要になります。しかし、このような場合でも貴社で行う予定の職務内容が以前の会社で行っていた職務内容と異なる場合には「就労資格証明書」を取得しておくことをお勧めします。

現在お持ちの在留資格はあくまで現在お勤めの会社との間で許可されたもので、新しい勤務先でも同じビザが認められるか否かを入管はその時点では何ら判断していません。したがって、次回のビザ更新の審査は実質新規の申請と同じになります。しかし、この就労資格証明書を添付すればすでに転職については審査済みですので、更新の審査が通常の更新の場合と同様になります。

さらに、中途採用の場合には場合には採用された外国人の方は転職した日から14日以内に「契約機関に関する届出」を入管の窓口で提出することが必要です。この届出義務自体は外国人の方ご本人に生じるものですが、この届出を行っていないと次回の更新の際に問題になるかことがあります。採用する貴社の方でも管理された方が良いと考えます。


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