帰国する予定の外国人の方であっても原則として社会保険に加入する必要があります

社会保険は「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つの総称です。ただし、「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」の3つのみを指して社会保険としている場合もあり、基本的には前後の文脈から判断します。

社会保険は、該当する条件を満たしている場合には加入することが会社と従業員の義務になります。日本人であるか外国人であるかなどの国籍は無関係です。以下、それぞれについて簡単に見ていきます。

(1)健康保険

日本では、病気やけがの際に安心して医療を受けられるようにすべての人が医療保険に加入することになっています。「健康保険」はそうした医療保険のひとつで、「健康保険組合」と「全国健康保険協会(協会けんぽ)」が運営しています。

会社が株式会社などの法人の場合には健康保険の適用事業所となり、従業員の健康保険への加入が必須となります。

また、従業員が常時5人以上いる個人の会社についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて加入が必須です。その他は任意適用事業所となります。

基本的には日本人の場合と同様の取り扱いがされます。例えば、個人が払う医療費の負担は日本人と同じ3割負担です。家計を支えている外国人の方の配偶者や子は年間収入が年収が130万円未満であり、かつ配偶者の年収の2分の1未満の方あれば被扶養者になることができ、日本国内で保険診療を受けられます。被扶養者として認定された方は保険料を支払う必要はありません。

「健康保険」への加入は外国人の方が雇用されたときから5日以内に事業主が「被保険者資得届」を事務センターまたは管轄の年金事務所提出することによって行います。

なお、会社の「健康保険」に加入しない場合であっても、在留期間が3か月を超え、住民票が作成される外国人の方であれば国民健康保険の加入対象となります。

国民健康保険に加入するときは、原則として日本に上陸した日から14日以内に届出手続きをします。期限後の届出も可能ですが、加入の手続きが遅れると、遡って保険料を支払う必要があります。

(2)厚生年金保険

日本の公的年金制度は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社などに勤務している人が加入する「厚生年金」があります。

”日本に住んでいる”という点に注目するため、現在日本に住んでいる外国人の方も日本人の場合と同様に年金制度の対象になります。この点、将来帰国されるかどうかは年金制度の対象になるかどうかとは無関係です。

健康保険の場合と同様に、会社が株式会社などの法人の場合には厚生年金の適用事業所となり、従業員の健康保険への加入が必要となります。

従業員が常時5人以上いる個人の会社についても、農林漁業、サービス業などの場合を除いて加入が必要な点も健康保険と同様になります。

配偶者の方の年間収入が年収が130万円未満であり、かつ扶養している配偶者の方の年収の2分の1未満の方あれば被扶養者と認められ、「第3号被保険者」となることができます。第3号被保険者の方は将来年金は受け取れますが、扶養されている配偶者の方が年金を支払う必要はありません。

また、お勤めされている会社で「厚生年金」に加入していない場合、在留期間が3か月を超え、住民票が作成される外国人の方であれば「国民健康保険」へ加入することになります。

日本に住む外国人の方は、原則として日本に上陸した日から14日以内にこの国民年金の届出手続きをする必要があります。届出期間を過ぎても、さかのぼって届出することができますが、その場合には遡って未納の保険料を支払う必要があります。

厚生年金に加入している場合には問題ないのですが、国民年金のみの場合にはこの届出をしないと自宅に納付書が送られてこないため納付ができません。年金の納付がなされていない場合、各種ビザ申請をする際に許可が下りない、更新の際に問題になるなど直接的に大きな不利益を受けることになります。特に永住許可の場合には厳しく、国民年金を支払っていない場合はおろか、一日でも支払いが遅れた場合であっても許可が下りません。ご注意ください。

ここまでのまとめ】
厚生年金と健康保険は「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」という書類を作成し、健康保険と厚生年金を一括して年金事務所に提出します。そのため、国民年金+健康保険や厚生年金+国民健康保険という組み合わせはできません。
簡単に言えば、外国人の方も会社で「健康保険+厚生年金」に加入していなければ「国民年金+国民健康保険」に加入することになります。

帰国する場合、支払った分の年金はどうなる?

以前から日本に住んでいた外国人の方が、都合により母国に帰るというようなことになった場合、それまでに払ってきた年金について「脱退一時金」という制度があります。脱退一時金は、日本国籍を有しない方が、国民年金、厚生年金保険の被保険者資格を喪失して日本を出国した場合、日本に住所を有しなくなった日から2年以内であれば請求することができます。全額が返還されるわけではありませんが、ある程度の金額は戻ってきます。脱退一時金を受け取った場合、年金を支払った期間はリセットされます。

他には日本が一部の国と締結している「社会保障協定」という制度もあります。この制度は、一方の国の年金制度の加入期間のみでは受給資格が満たせない場合、もう一方の国の年金制度加入期間も通算して年金を受けることができるようにする制度です。ただし、この場合に通算できるのは年金加入期間だけで、実際に支給される年金の額は、一方の国の実際の加入期間に応じた額に限られます。

(3)介護保険

「介護保険」制度とは、社会全体で介護を支えることを目的に創設された公的保険制度です。介護保険制度を利用すると、65歳以上の要介護状態または40~64歳の要支援状態になった方が訪問介護や訪問看護といった介護サービスを利用した場合、サービスにかかった費用の一部を保障してもらえます。こちらについても日本人であるか外国人であるかを問わず、加入が義務付けられています。

介護保険料の支払いが発生するのは40歳になった月からで、健康保健康保険料とあわせて介護保険料を納めることになります。

会社の健康保等に加入している方は、給与に各都道府県ごとに決定される介護保険料率を掛けて算出され、事業主がその半分を負担します。扶養されている配偶者は収める必要がありません。

国民健康保険に加入している方の場合は、被保険者の前年の所得に応じて算出される所得割と均等割、平等割、資産割の4つを自治体の財政により独自に組み合わせて計算されます。介護保険料率も都道府県ごとに異なります。

なお、65歳以上の被保険者の方の場合は、原則として年金からの天引きで市区町村が徴収する方法に代わります。

介護保険の自己負担額は1割から3割です。所得によって決まります。介護保険には要支援1~要介護5までの介護度があり、その介護度に応じて給付限度額が定められています。当然ながら介護度が重いほど給付限度額は大きい金額になります。

(4)雇用保険と労災保険

「雇用保険」「労災保険」を総称して「労働保険」とも呼ぶこともあります。「雇用保険」は失業や休業などをしたときに給付、いわゆる失業保険などが含まれる労働者の生活を安定させることなどを目的とした制度です。これに対して「労災保険」というのは労働者の業務上の事由や通勤途中の傷病等を補償する制度になります。

このような「労働保険」は、原則として 一人でも労働者を使用する事業は、業種の規模の如何を問わず強制的に適用され、その費用は原則として事業主の負担する保険料によってまかなわれます。労働者であればアルバイトやパートタイマー等の雇用形態や国籍は関係ありません。当然に外国人の方も対象になります。

しかし、例外的に下記のいずれかの場合には従業員の方は雇用保険の適用対象となりません。ただし、この場合でも労災保険は適用になります。

【雇用した従業員の方が雇用保険の対象にならない場合】
・契約期間が31日未満の場合
・労働時間が週20時間に満たない場合
・学生である場合

なお、外国人の方を雇用する事業主は、外国人労働者の雇入れや離職の際、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を提出することが義務付けられていますが、雇用保険に加入する場合は、雇用保険の手続きが外国人雇用状況の届出の代わりとなります。詳細は下記のリンク先をご覧ください。


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